2019





那須烏山市
  枠内の城名を触ると、縄張り図にジャンプします
@記号SKは、現地調査の生DATA=スケッチを示す
A『 』内の城は、調査したが、遺構が見あたらない城を示す。
 この場合、縄張り図の代わりに、地籍図や写真等を掲載している。
 (注)遺構が無いからと言って、そこが城として否定しているわけでない。
B図は断りのない場合、上面が北を示す。
  パソコンの特性上、縄張りをすべて画面上に掲載できていない場合がある。


烏山城 3の丸  12曲り 




 3の丸・・・烏山城のビーナス


         ◆秋の3の丸

 堀氏が整備したと言われているこの3の丸には、特別な思いがある。


 2006年。

 初めてこの3の丸を訪れた時、管理人は、その切り込みハギの角石の美しさに、息が止まった。

 もちろん、関西の石垣の城からくらべれば見劣りするものだろう。

 しかし、土造りをメインとした城の中で、このような石垣遺構の存在は、とりわけ際立つのだ。


               ◆3の丸・春




 それから、この城との長い付き合いが始まった。

 調査のとき、車は、いつも3の丸に止めて、山に入った。

 そのたびに、3の丸はいつも暖かく私を迎え入れてくれた。





   
     ◆夏の3の丸




 私は、山上の調査からはじめた。

 しかし、その調査がなかなか進まない。

 何しろ、烏山城の山上の城域は広く、山の中が荒れている事も手伝って、調査は困難を極めた。

 途中で調査を投げ出してしまおうかとも思った事もあった。

 しかし、思うところもあって、調査を続ける事になる。

 そうこうしているうちに、5年という長い月日が経ってしまった。


 その間、山麓にあるこの3の丸の調査は、ずっと後回しになっていたのである。

                      ◆3の丸・春 
 
 2010年、年末。

 山上遺構の調査が概ね終了し、いよいよ3の丸を描く日が来た。


 3の丸の角石の土壇に登り、スケッチブックにペンを下ろしたその時である。

       
 やっと来てくれたんですね・・・

 
と囁きが聞こえてきたのである。

 私に、3の丸が語りかけてきたのだ。


   
ずいぶん待ったんですから、綺麗に書いてくださいね 


 山の調査ばかりしていた私を、3の丸はずっと、待っていてくれたのだ。

 ”ありがとう、そしてごめんね。 本当に、待たせてごめん・・・・・・”



 この時、3の丸は私のビーナスとなった。


          ◆3の丸 初夏

 
 とまぁ、そんな謎めいた話は置いといて解説に写ろう


【解説】     以下が、3の丸の全貌である。 
               どうだろう?ビーナス。
                    綺麗に書けてるかな?

        
 
   
@3の丸上段 

         さて、現在3の丸は寿亀山神社、畑、私有地となっている。

         昔のままであるようだが、山上部分に比べてかなり改変が激しい。

         かつての3の丸の姿を浮かび上がらせるのには、古絵図を見るのが有効的である。

         前段でも紹介したが、再び絵図を見てみよう。







まず、非常に有名なのが正保の絵図である。(左図)

どうもこのころには3の丸は描かれていない。




つまり、3の丸は正保以降に整備されたことになる。

城主・堀氏がこの3の丸を整備したという由縁であろう。














次に紹介するのは、東北大学図書館所蔵の絵図。
ちょっと小さくてわかりずらいが、3の丸は2段構成となっているようだ。
石垣は小さ過ぎてよくわからない。

3の丸の上段には、御殿を示す建物のラインが描かれている。




◆東北大学付属図書館蔵 烏山城下図 折 一枚 寫本 (掲載許可整理番号19−243)

   
    ◆夏の石垣


 さて、下は国会図書館所蔵の烏山城絵図である。

 微妙に違うものの、曲輪の形や、門の配置が非常に似ている。

 下右の図では、3の丸は、ほとんど総石垣である。
     曲輪内には、車寄せのある大きな御殿が描かれる。
     曲輪縁には、多聞櫓が描かれている。

 下左の図では、石垣が使われているのは一部だ。
 白壁のみ描かれ、建物は門以外描かれていない。
 おそらく省略されているものと思われる。
 
 カーソルを乗せて見よう。
 門や石垣の所在、曲輪の形を絵図に沿ってなぞってみた。
        
     ◆両図ともに国会図書館蔵 野州烏山城 (掲載許可NO 国図企 100104004−1−2896号)








 次に、縄張り図と比較してみよう。

 一目瞭然だが、絵図と現遺構がほぼ一致する。

 亀山神社参道に沿っては、遺構が、かなり崩されてしまった事が推定できる。


 また、現在、寿亀山神社横に池があるが、
 上右の絵図には ”井” の文字が見える。

 おそらく、往時からの遺構なのだろう
                                                  ◆神社前
    
           




 A七曲り口(追手門?)
 

   さて、もう少し詳しく3の丸の古絵図を見てみよう。

   3の丸の南に 
”七曲り” があるが、これは山城部分と山麓部分の3の丸をつなぐ道である。

   この七曲りの”入り口”の門が、3の丸に併設される様に描かれている。

   以下に今まで紹介した古絵図、4枚の”七曲り口”を示す。


   
◆@正保絵図         ◆A東北大学図書館     ◆B国会図書館蔵               ◆C国会図書館蔵    
  
          東北大学付属図書館蔵 烏山城下図 折 一枚 寫本 (掲載許可整理番号19−243)
           
国会図書館蔵 野州烏山城 (掲載許可NO 国図企 100104004−1−2896号)
  


 

 @〜Cの図を見てわかるのだが、どの図にも門が描かれている。
 
 しかも、
BCの図には、門の両袖に石垣が描かれているではないか!

 Cの図では七曲り口ではなく”追手門”と記載され、見方によっては櫓門のような2階建ての門が想像できる。



 
 現状を見てみよう。



 実は、この七曲り口のある谷は、

 数年前に護岸工事が施された。



 だから現状は車が置けるほどまっ平らで、

 七曲り口、追手門の遺構は見る影もない。
 (下写真)

 
 


    ◆七曲り口(追手門?)の現況
       
   

       




 ただ私は、この護岸工事が行われる前に、この七曲り口を歩いた記憶がある。

 写真や、記録にはとどめていないが、確かそのころにも絵図に書いてあるような両袖の石垣には気付けなかった。

 おそらく、護岸工事前からこの石垣は破壊されていた可能性が高いのでは?と考えている。






   
     ◆梅の咲く、初春の3の丸
 
     

 
B風呂屋敷?

 

縄張り図をご覧いただこう。



3の丸の北側に(図では右が北方向になっている)、道が一本通っている。

この道は直線で3の丸に沿うようにあり、
現在突き当りは貯水槽になっている。


貯水槽は言うまでもなく近代のものであり、曲輪のようになっているが、
この平場は、貯水槽のために作られたと思っていた。





      
ところが・・・・・・・・・・・






 古絵図を見ていただこう。

 これが不思議なことに、絵図でも3の丸に沿うように道が描かれており、突き当りが曲輪になっている。

 絵図ABCともにしっかり書いてある。

 つまり、現在貯水槽になっているこの平場と、それに通じる道は往時からのものになる。

 

        
さらにCの図を見ると、

その曲輪には ”風呂屋敷?” と記載されている。
曲輪には長屋のような建物がある。

長屋左横には”腰掛”と書いてある小屋もある。



よく見ると絵図Aにも長屋がある。



おそらくここに、風呂に関する施設があったのだろう。

かつての風呂場が、現在は貯水槽?。
なにか因果を感じずにはいられない。

この平場は、昔から水が湧き出しやすい場所だったのかもしれない。  


 



  
  ◆冬の3の丸      




 
●12曲がり・・・搦め手口

 さて、本城の搦め手口である、”12曲がり”近辺を紹介しよう。
             

 まず、12曲がり上方の井戸曲輪から。



@
これは、草に覆われた井戸曲輪。
なにも見えないが、
写真の茂みの中に、池がある。



 

 


正保絵図をみると、井戸曲輪には番所があり、
井戸のような表現がある。

曲輪の入り口には平入りの門が描かれている。
”井戸御門” と呼ばれている。








           




 
A現在の井戸御門の様子。

 左手から土塁が落ちてくる。この様子は絵図と一緒だ。

 写真の道の先端に門があったと考えられる。
    
  (◆こんな感じと言う事で、画像にマウスを乗せよう)  

 
  




B
池からは沢が発生している。

この城の命の水である。


 





 ”12”曲がりとはいうものの、
    それほど道の折れは無い。
 
 井戸曲輪から下の道は
       3度曲がって、麓へ続く
 
 正保絵図とほぼ一緒だ。

 
                                      ◆正保絵図より





 
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